以前「コンサートホールのスタッフにできないこと」についてお話しましたが、
ほかにもあるので、ご紹介いたします。
コンサートホールのスタッフにできないこと、それは、
「お客様が拍手するタイミングをコントロールできない」です。
ある日、あるお客様からこんなご意見をいただきました。
「楽章間で拍手したり、フライング(まだ演奏が終わっていない・余韻が残っている状態)で拍手したりする人がいるのでやめさせてほしい」。
■クラシックのコンサートには、いくつか暗黙のルールがあります。
その一つが「拍手をするタイミング」です。
クラシックコンサートの拍手のタイミングは、
主に
・演奏者や指揮者が入場してきたとき
・曲が終わったとき
です。
演奏者や指揮者の入場は周りに合わせて拍手をすればOK。
難しいのは「曲が終わったとき」。
ジャーン・・・パチパチパチパ。。。? あれ、誰も拍手してない。。。???
ということがあったら、それは「楽章間」だったのかもしれません。
■例えば、
オーケストラの「交響曲」のように大きな曲は、
第1楽章
第2楽章
第3楽章
第4楽章
と小さい曲に分かれていて、
これら全ての楽章を演奏して「一曲」とカウントします。
そして、楽章と楽章の間は曲の途中なので拍手はしません。
上記の例でいうと、曲の終わりは第4楽章が終わった後、よって拍手をするタイミングも第4楽章が終わった後になります。
この「楽章」ですが、何楽章まであるかは、曲によって違い、
第3楽章までの曲もあれば第5楽章、第6楽章まである曲もあります。
そして、曲の切れ目が明確な楽章もあれば、次の楽章とつながって演奏され、切れ目が分かりずらい楽章もあります。
クラシックにあまりなじみのない方々は、そもそもそのような暗黙のルールを知らずに、楽章間で拍手をしてしまったり、知っていても「楽章」の終わりなのか「曲」の終わりなのかが分からない場合も少なくありません。
それだけではなく、単純に感動のあまり拍手をしてしまうということもあります。
このようなさまざまな理由によって「演奏が終わらないうちに拍手をする」ということが起きるのです。
■そして、もう一つ、クラシックファンが不満に思うのが「余韻が残っているうちに拍手をする」行為です。
コンサートホールは、良質な響きを生み出すために「残響」も計算されています。
最後の一音の残響まで静かに味わうのも、コンサートホールで生の演奏を聴く醍醐味です。そこで、拍手をしてしまうと、余韻がかき消されてしまいます。
それは、クラシックファンにとってとても残念なことです。
つまり
クラシックコンサートの拍手のタイミングには
・基本的に楽章間での拍手はせず
・演奏がすべて終わり、指揮者がお辞儀をするなど余韻を聞き届けてから
という「暗黙のルール」があるのです。
■「このようなルールがあるにもかかわらず、分かっていない人がいるので係員から声をかけてほしい」というのが、先ほどのお客様からの要望でした。
■とはいえ、お客様が拍手するタイミングを係員はコントロールできませんし、「タイミングが違っていますよ」と係員から声をかけることはしません。
ホールによっては、開演前のアナウンスで上記の内容を注意事項としてアナウンスしたり、ホームページや当日のプログラムに挟み込んだりしているのを見たことはあります。
レアなケースですが、主催者が開演前にマイクで拍手のルールについて説明していた公演もありました。
しかし、そもそも「拍手」は演奏者に対する賛美の気持ちを表す行為です。そのため、余韻をかき消すことになったとしても、演奏を妨げているとは断言できない難しさがあります。
それはあくまで、お客様の感覚や教養の問題で、ホールにいる係員はお客様の教養の部分にまで踏み込んでいくことはできないのです。よって、違うタイミングで拍手をした人を注意するということはありません。
その会場やいらっしゃるお客様の雰囲気で、初心者の方を育てていってほしいです。