やーぼのブログ

コンサートホールで案内係をしている著者が、出演者・聴衆・スタッフの思いが渦巻き乱反射する、劇場の魅力を語ります。 現在、新しいURL https://ya-bo.hateblo.jp/ に引っ越しを行っています。2023年3月31日にこちらのブログを閉じます。

コンサートでの「ブラボー」問題について

 

■”ブラボー”とは?
イタリア語で” bravo[ˈbravo]”とつづり、素晴らしいという意味合いです。
演奏の後、演奏者に対して称賛の意を表すために、観客が叫ぶことがあります。

日本では「ブラボー」と発音する人が多いですが、実際の発音は第2音節にアクセントがあるので、「ブラーヴォ[ˈbravo]」と発音します。また、相手が女性か男性か複数いるのかによって語尾が変化します。

日本では使い分ける人は少なく、どの対象に対しても「bravo」と叫ぶ人が多い印象でしたが、しっかりと使い分けている上級者の方もたくさんいます。


「ブラボー」は演奏者に対しての賞賛ですので、その気持ちを言葉で伝えるのは悪いことではありません。しかし、「ブラボー」も「拍手」同様、問題になる場合が多々あります。


■「ブラボー」問題

よく言われるのは、
・まだ曲が終わっていないのに、演奏にかぶせて「ブラボー」と叫ぶ
・本当に感動して声に出したというよりは、ただ言いたいだけで、やたらと「ブラボー」と言う
というもので、特に中高年の男性に多いと言われています。



「拍手」の問題の記事でも書きましたが、

わざわざコンサートホールに足を運ぶ醍醐味は、コンサートホールという良質な響きを生み出す楽器の中で、最後の一音の残響まで味わえることです。

余韻まで楽しみたいのに、それをかき消すような「拍手」や「ブラボー」という発声は迷惑行為で不快だと感じる人は多くいらっしゃいます。(実際私もやめてほしいと思っている…。)


■案内係にできないこと&難しいところ

では、このような人がいた場合、係員はその人を注意できるのでしょうか?

出来ません。

「拍手」や「ブラボーと叫ぶ」行為は、演奏者に対する敬意からくる言動と解釈できます。その行為によって、迷惑だと感じたり不快な思いをしている人がいても、迷惑行為と断定できないものや進行の妨げではない行為、つまりマナーモラル教養の問題案内係が本人に直接注意するのは極めて難しいのです。

なぜなら、案内係は風紀委員ではないからです。

仮に注意をするとして、
読者の皆さんはどのように注意をしますか?

「演奏が終わる前に拍手をしたり、ブラボーと大きな声を発する行為は、ほかのお客様のご迷惑になりますので、おやめください」とかですか?


このようなことをする方々は、遠回しに言ったり、やわらかいニュアンスで言ったりしても通じない場合があり、言うなら直接的な言葉で注意するしかありません。

しかし、このような注意をされた場合、その人はプライドを傷つけられたと感じるでしょう。もちろん、迷惑行為に匹敵することをしているのだから、それくらいのことは言われて当然だという意見はもっともだと思います。

しかし、案内係の役割は、公演を円滑に進めることで、お客様の教養のなさを指摘することではありません


■ちなみにコロナ禍の現在は、場内での大きな声での発声は禁止されています。

ですので、「ブラボー」などと叫んだ場合は、すぐに案内係やスタッフに注意されます。
しかし、それは感染拡大防止対策のガイドラインに乗っ取った運営を行い、演者、観客、スタッフの安全と健康を守るためで、鑑賞マナーに対しての注意とは意味合いが違います




■ではどうするか?

布石(ふせき)を打つことです。
・開演前にアナウンスする
・プログラムに鑑賞マナーについての紙を挟み込む
・主催者があらかじめ、お客様に説明をする
・演奏者本人が舞台の上で拍手はしないでほしいと発言する

途中でクレームがあったら、
・アナウンスで注意喚起
・注意事項の書かれたボードなどで全体的に注意喚起
などです。

しかし、それも主催者の判断によるもので、案内係の独断で行うことはできません。

どちらにせよ、特別な場合を除き、本人に直接ではなく、会場全体への注意喚起になってしまうのです。(そして、多くの場合本人は自分のことだと気づいていない…。)


■まとめ 

公演の進行以外のお客様の教養やマナーに関することは、案内係が直接注意するのは
困難である。


「ブラボー」と叫ぶときは、演奏にかぶせず、演奏が完全に終わって会場が拍手の嵐になっているところで叫ぶと問題を緩和できる。