やーぼのブログ

コンサートホールで案内係をしている著者が、出演者・聴衆・スタッフの思いが渦巻き乱反射する、劇場の魅力を語ります。 現在、新しいURL https://ya-bo.hateblo.jp/ に引っ越しを行っています。2023年3月31日にこちらのブログを閉じます。

【神奈川県立音楽堂】再び!前川建築の魅力に触れる2022

■1年ぶりに「前川建築見学ツアーin音楽堂」に参加してきました。



神奈川県立音楽堂は、私の好きなホールの中でも「ベスト5」に入るホールで、素朴ながらも、現代の私の感覚から見ても斬新な色使いと素材の質感を生かした建物が何とも言えず素敵なホールです。

お仕事で何度も訪れている場所ですが、建築ツアーに参加すると建物とゆっくり向き合えるので、気に入っています。

今回は、ツアーの内容と私が実際に利用して普段感じていることを織り交ぜながらお話します。

ここは、エントランス。


私が、神奈川県立音楽堂で最も気に入っている場所です。この色合いが戦後すぐの日本で受け入れられたのが驚きです。一時期違う色になったこともあったそうですが、リニューアルの際に当時の色合いを再現したのだそう。

単なる、赤・緑・黄色ではなく、それぞれに、前川のこだわりが反映された特別な色になっています。


冬は寒くて、夏は暑い「風除室」。夏にここでチケットをもぎっていると意識がもうろうとしてきます。館内の空調はリニューアルの際に改善されたそうですが、新しい建物ではないので、これが限界なのだそう。

そのためスタッフは、開演する頃には干からびる寸前の状態です。



こちらは、1階のロビー。

ガラス張りで中が見えるため、公演中にお客様以外の方に見学したいとよく言われます。しかし、公演のある時はチケットのない方の入場はできないので、お断りすると残念そうに帰っていきます。でも、見学したくなる気持ちはよく分かります。



今回のツアーも前回同様少人数に分かれて館内を回ったのですが、今回担当してくださったガイドさんは、ご自身で見つけて拡大した図を大きなファイルに入れて、図を示しながら解説していました。

私も場所は違いますが、同じ劇場のガイドをしているので、そういう視点も参考になります。

2階のロビーからの眺め。

(ほかの参加者が写っているためぼかしてあります。)

パブリックアート(公共の空間に置く、絵や銅像など)はありませんが、空間そのものが絵になっていて、その美しさにため息が出ます。

冬は寒いし、夏は暑いし、女性お手洗いは階段を上らないとないし、そもそもEVもエスカレーターもない。窓は雨が降ると雨漏りをするし、老朽化による建て替えが必要だと言われたらそうだと思います。

ですが、音楽堂の魅力が使いにくさを上回っていたからこそ、こうして存続できたのだと思います。


この日は、あいにく曇り。
ですが、普段は立入禁止のテラスに出ると、なんだかすがすがしい気持ちになります。

このブロックの形も空調や照明が発達していなかった時代だからこそ考案された、斬新な工夫。

そして、場内へ。


木のホールは、素朴でシャンデリアなどの装飾はありませんが、足を踏み入れた瞬間素敵な場所にを訪れたと思わせる何かがあります。



木のぬくもりが広がる、木のホール。
客席のシートの色は青いですが、不思議と視覚的な冷たさを感じません。


そして、舞台へ。

当時、このホールを訪れた人々は何を思っただろう?そして、聴衆はどんな服装で、どんな人々が訪れていたのだろう?



今回、この記事でご紹介したいのは、舞台の幕について。
クラシック専門のホールは舞台と客席が一体となっていて、プロセニアムと呼ばれる体育館のようなふちもないため、緞帳もありません。

しかし、講堂としての役割も担うため中央から開くタイプの舞台カーテンがついています。こちらのカーテンも当時のサンプルをもとに再現されたものです。

そして、よく見るとキラキラしています。


私は、このキラキラにガイドさんの解説で初めて気づきました。こういう新たな気づきがあるのが、ツアーの面白いところです。

そして、今回もう一つ興味深い場所に案内していただきました。それがこちら↓

 


奥の方に何やら天井の低いお部屋があります。

ピアノ庫です!

私は、今回初めて入ります。


お部屋の中には、スタンウェイが鎮座しておりました!



お部屋というか、ほぼ倉庫と化しているピアノ庫。天井がとても低く、ピアノ出し入れは大変そうですがどうなのでしょう?

もともとは、搬入口だった場所に部屋を足したため、このような仕様になったのだとか。


壁には、棚がありいろいろな道具が並んでいます!!

大きなクリップにはたきやコロコロをかけていますね。こういう棚って、実は作業を効率化するためのさまざまな工夫がされていて、そこを使用している人の性格なども感じ取れて地味に面白い。

次は、楽屋です。


狭くて無機質な廊下や


上るのも下りるのも大変な急こう配な階段。


ソリストや指揮者のための一番良いお部屋。


もともとは、野外だった場所に増築された大人数のお部屋。


館内ツアーが終了した後は、場内に戻って、県立音楽堂と一体の建築物として併設されている神奈川県立図書館の方のお話を聞きました。


実は、神奈川県立図書館は「神奈川県立図書館前川國男館」としてリニューアルするため、現在改修工事中です。

音楽堂のすぐ横にあったので、行こうと思えばすぐに行けたのですが、なかなか入る機会がなく、そのまま改修工事になってしまいました。一度は行こう、行こうと思っていたのですが…行動しないとだめですね。

すごく残念で、後悔しています。

ですが、このツアーでは最後に、改修工事前の映像を見ることができました。映画のように仕上げられていて、短い映像でしたが、とても心にしみました。


以上 神奈川県民音楽堂建築ツアーのレポートでした。