やーぼのブログ

コンサートホールで案内係をしている著者が、出演者・聴衆・スタッフの思いが渦巻き乱反射する、劇場の魅力を語ります。 現在、新しいURL https://ya-bo.hateblo.jp/ に引っ越しを行っています。2023年3月31日にこちらのブログを閉じます。

行方不明になりかけました【飯能市市民会館】

本日は、とあるバレエ団の公演のため「飯能市市民会館」へ向かいます。

飯能駅を出ると閑静な住宅街。朝の清々しい空気の中、市民会館に向かって進んでいきます。

飯能のホールを訪れるのは初めてです。それほど遠くない位置に山が見えるのがとても新鮮でワクワク。

飯能市市民会館」は、駅から少し歩いたところにあるので、google先生のアテンドに従いながら進んでいきます。


どんなところかな~♪ どんなところかな~♪


途中で、お墓の中へと導かれていきました。

私は、音楽大学出身なのですが、音楽大学はお墓の近くにあることが多く、私自身も通学で夜遅くにお墓の隣を歩いていましたので、許容範囲です!

お墓を越えてさらに進みます。

私は、子供の頃、家族でよく山登りをしたのですが、道が山道の入り口のようだなーなんて思いながら進んでいきます。

そんなこんなしているうちに、だんだんと道は険しくなり、というか


・・・ここは、どこ?



市民会館は?

市民会館に行きたいのに、どんどん山の中へと入っていきます。
今まで100を超える会場に勤務してきましたが、今回は様子が違います。このまま進んで、果たしてホールがあるのか、この道はどこに続いているのか…。

半信半疑のまま進んでいきます。

道は、山道でパンプスなどのシティシューズで歩けるような道ではありません。

私は普段、スニーカー(どちらかというとトレッキングシューズに近いもの)を履いており、会場で履き替えているのですが、この時ほどこの靴でよかったと思ったことはありません。



しばらく進んでいくと、川が流れており、その上に小さな橋がかかっていました。橋に柵はなく、万が一よろけて落ちたら、だれが気づいてくれるというのでしょう?

というか、出勤したときは朝ですが、勤務が終了するのは夜。街灯もないこの道をまた通れというのか…。

そんなことを考えながら、さらに進んでいくとコンクリートで舗装された道に出ました。

そして

!?



なんと、飯能市文化会館が現れました。
先ほどの風景とのあまりの違いに狐に包まれたような気持です。

公演そのものは、一般的な公演だったのですが、飯能市市民会館へ行く予定のある方は、よく調べていくことをおススメします。

ちなみに私は、こういう道が好きなので、帰りもこの道を通って帰りました。

夜10時、とても暗かったのですが、案内係の3種の神器「ペンライト」で、自分の足元を照らしながら歩きます。

ペンライトは、暗いホール内でお客様の足元を照らすものですが、自分の足元を照らす日が来るとは…。

今までで一番ペンライトが活躍した瞬間でした!

山道を抜けて、例のお墓で前を照らすと「無縁仏」の文字…。「千と千尋の神隠し」でも道に迷い込む前のシーンに、似たような場所があったことを思い出しました。ここも再開発が進む過程で、撤去された墓石が集められてたのでしょう。


本日は、不思議な道に迷い込んだお話でした。



【神奈川県立音楽堂】再び!前川建築の魅力に触れる2022

■1年ぶりに「前川建築見学ツアーin音楽堂」に参加してきました。



神奈川県立音楽堂は、私の好きなホールの中でも「ベスト5」に入るホールで、素朴ながらも、現代の私の感覚から見ても斬新な色使いと素材の質感を生かした建物が何とも言えず素敵なホールです。

お仕事で何度も訪れている場所ですが、建築ツアーに参加すると建物とゆっくり向き合えるので、気に入っています。

今回は、ツアーの内容と私が実際に利用して普段感じていることを織り交ぜながらお話します。

ここは、エントランス。


私が、神奈川県立音楽堂で最も気に入っている場所です。この色合いが戦後すぐの日本で受け入れられたのが驚きです。一時期違う色になったこともあったそうですが、リニューアルの際に当時の色合いを再現したのだそう。

単なる、赤・緑・黄色ではなく、それぞれに、前川のこだわりが反映された特別な色になっています。


冬は寒くて、夏は暑い「風除室」。夏にここでチケットをもぎっていると意識がもうろうとしてきます。館内の空調はリニューアルの際に改善されたそうですが、新しい建物ではないので、これが限界なのだそう。

そのためスタッフは、開演する頃には干からびる寸前の状態です。



こちらは、1階のロビー。

ガラス張りで中が見えるため、公演中にお客様以外の方に見学したいとよく言われます。しかし、公演のある時はチケットのない方の入場はできないので、お断りすると残念そうに帰っていきます。でも、見学したくなる気持ちはよく分かります。



今回のツアーも前回同様少人数に分かれて館内を回ったのですが、今回担当してくださったガイドさんは、ご自身で見つけて拡大した図を大きなファイルに入れて、図を示しながら解説していました。

私も場所は違いますが、同じ劇場のガイドをしているので、そういう視点も参考になります。

2階のロビーからの眺め。

(ほかの参加者が写っているためぼかしてあります。)

パブリックアート(公共の空間に置く、絵や銅像など)はありませんが、空間そのものが絵になっていて、その美しさにため息が出ます。

冬は寒いし、夏は暑いし、女性お手洗いは階段を上らないとないし、そもそもEVもエスカレーターもない。窓は雨が降ると雨漏りをするし、老朽化による建て替えが必要だと言われたらそうだと思います。

ですが、音楽堂の魅力が使いにくさを上回っていたからこそ、こうして存続できたのだと思います。


この日は、あいにく曇り。
ですが、普段は立入禁止のテラスに出ると、なんだかすがすがしい気持ちになります。

このブロックの形も空調や照明が発達していなかった時代だからこそ考案された、斬新な工夫。

そして、場内へ。


木のホールは、素朴でシャンデリアなどの装飾はありませんが、足を踏み入れた瞬間素敵な場所にを訪れたと思わせる何かがあります。



木のぬくもりが広がる、木のホール。
客席のシートの色は青いですが、不思議と視覚的な冷たさを感じません。


そして、舞台へ。

当時、このホールを訪れた人々は何を思っただろう?そして、聴衆はどんな服装で、どんな人々が訪れていたのだろう?



今回、この記事でご紹介したいのは、舞台の幕について。
クラシック専門のホールは舞台と客席が一体となっていて、プロセニアムと呼ばれる体育館のようなふちもないため、緞帳もありません。

しかし、講堂としての役割も担うため中央から開くタイプの舞台カーテンがついています。こちらのカーテンも当時のサンプルをもとに再現されたものです。

そして、よく見るとキラキラしています。


私は、このキラキラにガイドさんの解説で初めて気づきました。こういう新たな気づきがあるのが、ツアーの面白いところです。

そして、今回もう一つ興味深い場所に案内していただきました。それがこちら↓

 


奥の方に何やら天井の低いお部屋があります。

ピアノ庫です!

私は、今回初めて入ります。


お部屋の中には、スタンウェイが鎮座しておりました!



お部屋というか、ほぼ倉庫と化しているピアノ庫。天井がとても低く、ピアノ出し入れは大変そうですがどうなのでしょう?

もともとは、搬入口だった場所に部屋を足したため、このような仕様になったのだとか。


壁には、棚がありいろいろな道具が並んでいます!!

大きなクリップにはたきやコロコロをかけていますね。こういう棚って、実は作業を効率化するためのさまざまな工夫がされていて、そこを使用している人の性格なども感じ取れて地味に面白い。

次は、楽屋です。


狭くて無機質な廊下や


上るのも下りるのも大変な急こう配な階段。


ソリストや指揮者のための一番良いお部屋。


もともとは、野外だった場所に増築された大人数のお部屋。


館内ツアーが終了した後は、場内に戻って、県立音楽堂と一体の建築物として併設されている神奈川県立図書館の方のお話を聞きました。


実は、神奈川県立図書館は「神奈川県立図書館前川國男館」としてリニューアルするため、現在改修工事中です。

音楽堂のすぐ横にあったので、行こうと思えばすぐに行けたのですが、なかなか入る機会がなく、そのまま改修工事になってしまいました。一度は行こう、行こうと思っていたのですが…行動しないとだめですね。

すごく残念で、後悔しています。

ですが、このツアーでは最後に、改修工事前の映像を見ることができました。映画のように仕上げられていて、短い映像でしたが、とても心にしみました。


以上 神奈川県民音楽堂建築ツアーのレポートでした。








生誕110年傑作誕生・佐藤忠良【群馬県立館林美術館】

◼️生誕110年傑作誕生・佐藤忠良群馬県立館林美術館】に行ってきました!



ずっと行きたかった、『生誕110年傑作誕生・佐藤忠良』【群馬県立館林美術館】に行ってきました!

今年2回目の訪問となる、群馬県へ。
電車に揺られること2時間強、「多々良駅」に降り立ちます。


なんとも趣のある駅に着きました。


旅人になったような気分です。
この日は、あいにくくもりでしたが、かろうじて雨は降っていませんでした。


改札を出て、目に飛び込んできたのは、本日の目的地である「群馬県立館林美術館」の看板と3匹のたぬき。案内板には今回訪れる「生誕110年傑作誕生・佐藤忠良展」のポスターが貼ってあります。

多々良駅

さっそく美術館を目指して歩きます!
民家や畑はあるのですが、人通りはほとんどなく、途中で車が往来する道路がありましたが、歩いているのは私だけです。

道の両脇は、鮮やかな緑。


広い田んぼがあり、一面から稲の匂いがします。

こうして歩いていると、祖父の家を思い出します。祖父の家は農家で、夏になると青々とした畑や田んぼの周りで遊んでいました。あの頃は犬を飼っていて、その犬に会うのがとても楽しみだったなー。

時は、巻き戻せないけれど、その頃の経験が今の私の中に生きていて、私の行動基盤になっている気がします。


道を覆う勢いで、草木が伸びています。
ずんずん歩いていくと、もしかしてこれかな?と思う建物が見えてきました。


目標に向かって進んでいきます。



広い場所にたどりつきました。前方に田んぼがあるので、近寄っていきます。

 

すると、



一面の
緑!
東京に住んでいる私には、信じられないほどの青さです。



そして、右を向くと・・・緑の芝生に包まれた「群馬県立館林美術館」が!!
ついに、やってきました!



写真で見たあのウサギが目の前に!



群馬県立館林美術館は、緑に囲まれた静かで、落ち着いた場所にありました。


入り口には、今回の展示会のポスターが張られていて、まるでパブリックアートのようです。たどり着けた嬉しさと、美術館の美しさとワクワクで、もう楽しいやーぼ。




滋賀県の佐川美術館を訪れた時も感じた、美術館そのものの美しさに浸ります。


本日は、平日だったこともあり、来場者はほとんどいませんでした。


ほぼ貸し切りの館内へといざなわれていきます。



はやる気持ちを抑えながら、順路に沿って進みます。



なんと美しい廊下でしょう。透明なガラスから見える風景からエネルギーを感じます。



さらに進んでいくと、だんだんと「佐藤忠良」の文字が見えてきました。



館内は静かで厳かな雰囲気です。


白い壁で囲まれた場内に並べられた佐藤氏のブロンズ像は、野外や公共施設で見る像とは違って見えました。


誰もいない静かな廊下



このガラス扉の向こうは、別館に続いています。




少し秋めいた木々が何とも言えず素敵です。



そして、こちらが 彫刻家のアトリエ(別館) です。くすんだ色のレンガと木の扉が印象的で、風景に溶け込んでいます。この建物が見えた時、まるで、絵本のなかに迷い込んだように錯覚しました。

この建物は、彫刻家フランソワ・ポンポン(François POMPON)の生まれ故郷であるブルゴーニュ地方の当時の農家をイメージして作られたもので、室内はアトリエが再現されています。


こちらのアトリエは、1933年に撮影された何枚かのアトリエの写真をもとに、塑像台や地図など、ポンポンのアトリエにあったオリジナルの資料と、20世紀初頭のアンティーク品を使って再構成しているとのこと。

天井の梁や扉は、外国から古材を輸入していることから、より忠実に再現しようとした担当者の思いが感じられます。

私は、フランソワ・ポンポン(François POMPON)のことを知らなかったのですが、彼の細部を省略し形態を単純化した流麗なシルエットによる動物彫刻を見ると、現代に通づるものがあり、戦前に生まれた人の作品とは思えないなと感じました。




このあたり一帯は公園になっていて、人は少ないものの、時折お散歩している人やランニングをしているがいて、こんなに洗練された場所が近くにあるなんてうらやましいなと思いました。




再び館内へ。透明感のある水面と青々とした草木、そして、それを眺めることのできる広いガラス張りの空間。美術館のどこを見ても美しくてため息が出ます。

このシンプルな美しさは、鑑賞を妨げず、作品を際立たせているのかもしれません。

 



ミュージアムショップで、書籍をいくつか購入した後、水辺に佇むワッフル専門店「エミール」で遅めのランチをすることにしました。

一続きになった廊下のガラスが美しく、鑑賞の余韻を残してくれます。ちなみにレストランは、貸し切り状態。



こちらでは、看板メニューの「エミールプレート」をいただきました。
ワッフル・ソーセージ・野菜という、私としては斬新でおしゃれな盛り合わせに、心惹かれます。

 



外は、大粒の雨が降ってきて、レストランを出るころには土砂降りになっていました。
この素敵な美術館にまたいつ来られるか・・・と思うと名残惜しかったのですが、帰ることにします。

群馬県で、またもや心惹かれる魅力的な場所を見つけてしまいました。また、訪れたいです。


■ジュニアガイド


展覧会の入り口にジュニア用の解説が置かれていました。この解説が、とてもよかったので、載せておきます。(3つ折りを開いたものです。)



生誕110年 傑作誕生・佐藤忠良
群馬県立館林美術館

開催期間:2022年7月16日(土)〜2022年9月19日(月・祝)
     ※会期中、一部作品の展示替えを行います。
前期:   7月16日(土)~8月21日(日)
後期:   8月23日(火)~9月19日(月・祝)
時間      9:30〜17:00 (最終入場時間 16:30)
休館日     月曜日 
観覧料     一般 830円(660円)・大高生 410円(320円)




 

車椅子ユーザーのサポート「車椅子の目線を体験」



舞台芸術鑑賞サポート講座の最終講座、車椅子編です。

本当は、3番と4番の講座にも参加したかったのですが、日程が合わず断念しました。
筆談の体験してみたかった…。

さてさて、会場に向かいます。

今回の会場は、もともと学校の校舎として使われていた建物を市民向けに解放している「みらい館 大明」。

建物は学校なのに、学校ではないって、不思議な感じです。

■今回の講座では、

・各劇場における車いすスペースの現状
・日常的に車いすを使って生活されている方のゲストインタビュー
車いすの鑑賞サポートの方法
車いす操作の実習などを行います。

■車椅子での鑑賞ホールに常駐している係員は、車いすでご来場される方用の導線を共有しています。また、公演ごとに必要な方がいらっしゃる可能性があるかどうかを事前に確認しています。そして、初めて訪れる劇場の場合でも、建物のつくりや館内図を見て把握するようにしています。

このように昨今、車いすで劇場に来場される方をお迎えすることは珍しいことではなく、いらしたときにどうするのか常に考えています。そして、主催者や劇場も積極的に来ていただこうという動きがあります。

しかし、そこにはさまざまな障壁があり、その障壁について考えさせられる内容でした。

車いす鑑賞の障壁

●そもそも劇場の造りが車いす利用者に対応していない

私が業務を行っているホールや劇場は、程度の差こそあれ、車いす鑑賞用のスペースがある劇場です。しかし、演劇を行う古くからある小規模の劇場は、車いすの利用に対応していないこともあるのです。

例えば、先日訪れた「俳優座劇場」。

こちらの劇場は、車いす用の(車いすに座ったまま鑑賞できる)スペースはないため、車いすを降りて劇場の座席に移る必要があります。このようなことを私たちの間では「席移り」などと呼んでいます。そして、それ以前に客席に入るまでにもかなりの段数の階段があり、車いす用のお手洗いも、階段を上がった先にあるのです。

つまり、車いすから降りてある程度歩ける方でないと、チケットを買っても席にたどり着くことができないのです。これらの事項をしっかり把握せずに、チケットを売ってしまったら、会場まで来ていただいても鑑賞していただくことができず、問題になってしまいます。

車いす用のスペースはあるが、別の用途に使われている

車いす用のスペースには、主に2つの種類があります。
・普段は座席があり、取り外すことで車いす用のスペースにするタイプ。
車いす席として確保されているタイプ。

取り外す必要のある席の場合、取り外さずに通常の席として販売していると、車いすのまま鑑賞したい方がいらしても席はありません。

では、もともと車いすのスペースとして空いている席なら、問題ないのかというとそんなこともなく、ちょうどよい広さと場所であるため、PA(音響機器)のミキサーの操作席にしたり、カメラを置いて撮影に使ったりすることもあります。すると、席がなくなってしまいます。

今回のゲストのMさんも車いす席を買ったはずなのに、このような用途に使われており、鑑賞できなかったという経験を語ってくださいました。

●公演のチラシやHPに、車いす席について書かれていない

電話などで問い合わせなければ、分からなかったり、問い合わせても、車いすスペースについて主催者が把握していないケースもあります。

私も、チケットの電話受付をすることがありますが、普段勤務している劇場以外のバリアフリーに関する質問は分からないため、劇場に問い合わせて確認しています。

しかし、その劇場にいれば即座に答えられるのかというとそうでもありません。それが、次のケース。

●「廊下」「扉」「お手洗い」「スロープ」などの幅を知りたい

車いすの幅は「JIS規格」で決まっており、
手動車いす:630mm以下
電動車いす:700mm以下
となっているのです。

しかし、一口に車いすと言ってもさまざまなサイズがあり、電動車いすのように特殊な形状をしている場合、劇場のさまざまな設備が、自分の乗っている車いすにあっているかどうか確認を入れているというのです。

正直に申し上げて、私は最も多く勤務している劇場であってもスロープや扉の「幅」を聞かれたら答えられません。

「JIS規格」で決められた車いすの幅が、
手動車いす:630mm以下
電動車いす:700mm以下であることから、
車いすの方を考慮して幅を考えるなら「800mm~900mm」の幅を確保しなければならないことになりますが、すべての劇場がそれを考慮してバリアフリー対策をしているとも限らないということ学びました。

●最寄り駅~劇場~客席までのバリアフリールートが知りたい

私も初めて訪れる劇場に行くときは、劇場のHPでアクセスを調べことがありますが、多くの場合あまり分かりやすくないなーと思います。結局googleマップで調べることになります。

バリアフリー対応が必要な方々にとって、街を歩いているように表示してくれるgoogleマップは、EVがあるのか、道の幅はどれくらいなのか、劇場の入り口はどうなっているのかなどを知る大きな手がかりになると思います。

しかし、ありませんか。

この部分が知りたいのに、車が止まっていたり、表示がそこだけ不鮮明だったり…。

ゲストの方々も同じことをおっしゃっていました。それに、幅なんて推定するしかありません。

ここまで来て、それらを網羅した情報をまとめて、各劇場でつくるしかないという思いが芽生えました。

でも、ありますよね。バリアフリーの情報をHPに載せている劇場。

■劇場㏋のバリアフリー情報のページが分かりずらい

ゲストのお二人によると、今現在、ほしい情報を網羅して提供できているHPは、ないそうです。また、バリアフリー情報のページを見つけるのも難しいとのこと。

例えば、「東京芸術劇場」のHP。



Webサイトの一番上のバーに、いくつか項目が並んでいて、その中に「サイトマップ」というバーがあるのですが、そこをクリックしてスクロールしていくと「バリアフリー情報」の項目にたどり着けます。

 


しかし、サイトマップを直感的にクリックできるかどうか…。
「公演情報」「チケット」「施設案内」と同じように表示されていると、見やすいと思いました。

ちなみに、説明が分かりやすいHPとして挙げられていたのは新国立劇場のHP。
どれどれ。帰ってさっそく調べます。

こちらも初めの画面に、直接「バリアフリー情報」が表示されているわけではなく、「施設・サービスを知る」というところにカーソルを合わせると、各項目が出てきます。


バリアフリー情報」をクリック。


下へスクロールして、


バリアフリールート」の文字をクリック


立体地図、写真、矢印の書き込みを駆使して解説しており、かなり充実しています。


■まとめ

このほかにも、車いすを操作する体験やこの講座でお話を聞いて初めて気づいたことがたくさんあるのですが、またの機会にお伝えしたいと思います。

この講座を受けたから、すぐ実践というタイプのものではありませんが、考えるということが大切だと思いました。知らなければ、気づかなければ、自分だったらどうするのか考えられないからです。

お手伝いが必要な方へのサポートについて考え、ちょこっとだけ実践したひと夏でした。


■【個人型講座】

【5】車椅子ユーザーのサポート「車椅子の目線を体験」
日時:8月27日(土)13:00~15:00
内容:▶車椅子ユーザーの話を聞く。
   ▶劇場で配慮できることを考える。
   ▶車椅子に乗ってみる。
料金:1,000円
会場:みらい館 大明108



視覚障がい者のサポート「音声ガイドを作成しよう」⑥完

■視覚障がい者のサポート講座(全6回)

 内容:①視覚障がい者の話を聞く
    ②音声ガイドの実例紹介・機材の説明
    ③事前解説をつくる 
    ④本編ガイドを考える
    ⑤誘導の練習 
    ⑥劇場実習 @俳優座劇場(Pカンパニー「はだしのゲン」を視覚障がい者と一緒に音声ガイド付きで鑑賞する)

⑥劇場実習~音声解説はお芝居をみんなが楽しめるツールだと思う~


本日は、いよいよ最後の講座、劇場実習です。開場前に、本日の行程についての説明を受けた後、劇場のエントランスや客席、お手洗いを確認。

青年座は、趣のある、オシャレな造りです。しかし、階段が多い。エントランスの階段は波打った緩やかなカーブで、客席の入口も階段を上ったところにあります。

演劇を専門に行う小劇場ならではのこじんまりとしていて、レトロな感じがなんとも言えず素敵で、劇場探検隊の私としては魅力的を感じます。

しかし、この時ばかりは視覚障がいの方を案内するというプレッシャーから、建物のバロックを思わせるデザインが「トラップ」に見えました。

普段からバリアフリーは意識していますが、より一層意識した瞬間でした。


◼️お迎え

まず、駅の改札までお迎えに行きます。

これは、劇場に常駐している案内係にはない業務(あくまで私の所属する会社の場合)なので、新鮮です。私は、こんなサービスがあることをこの講座で初めて知りました。何人たりとも劇場へは自力でたどり着くものだと考えていたからです。


早速お約束した場所(駅の改札)へ迎えに行きます。実は駅の改札から地上までもかなり長い階段があり、人通りも多く、迷路のようです。

お迎えに伺ったHさん(女性)は、ヘルパーの方と一緒にいらっしゃいました。改札からは、実習のため私が案内をさせていただきます。

案内をしながら、ヘルパーの方に教えていただいたのですが、階段とエスカレーターがあった時は、どちらが良いか聞くのだそうです。

私は、エスカレーターの方が良いだろうと思っていたので、意外でした。

 

■劇場へ

劇場に入ると、検温と消毒、その後エントランスの階段を降りたところで、チケットを受け取り、お手洗いへ。

お手洗いもとても狭いです。通路は、人がすれ違えるか否か。
お手洗いでは、
・トイレットペーパーの位置
・流すボタンやレバーの位置
・便器の蓋が開いているかどうか
をお伝えします。

そして、何とか階段を上がり、客席へ。


■事前解説

客席には、ビニールに入った、本日のプログラムとチラシの束が置いてありました。
「墨字で書かれたチラシの束がありますが、持ち帰りますか?」と尋ねます。

そして、イヤホン(ラジオ)をお渡し、機械の説明。

事前解説は、開場時間中に2回、2人の受講生が1人ずつ自分の作ったものを読みます。

■鑑賞

 

音声解説は、主に視覚にハンディキャップのある方が舞台上の様子を把握しながらお芝居を楽しめるように提供されているものです。

しかし、今回の解説を聞いて、音声解説が必要なのは、ハンディキャップのある方だけではないと思いました。

例えば、公演開始前の事前解説。

パンフレットを隅から隅まで読めば、全体を把握することができるかもしれません。しかし、人の声で聴くと違った気付きがありました。

また、どのような内容でどういうところが見どころなのか、パンフレットにないことを事前に知ったことでそのシーンになった時、より多くのものが見えたり、

本編中も何気ない動作の意味や背景などの説明があるとそういうことだったんだ、とより深く理解できたりしました。

もう知っているはずの映画や曲でも、何度も見ると新しい発見があるように、1回で全てを知れることの方が少ないと思います。

歌舞伎などを鑑賞するときのイヤホンガイドのように、なんらかのガイドがあるのは視覚に障害が無くても楽しいと私は感じました。

◼️解説技術

日々変化する生のお芝居に合わせて解説を入れる高度な技術とお芝居をしっかり把握した上で選ばれた洗練された言葉選びによるものだと思いました。

 

事前に準備しておいても、ゲネプロや当日の変更もありますし、本番中もいつもとは違うこともあったりするので、それに合わせて解説を変えるのは職人技です。

 

私もコンサートで影アナウンスを担当することがありますが、初期の頃は失敗出来ないと思い頭が真っ白になっていました。

 

1公演ずっとなんて…。すごい…。

 

■座談会

鑑賞が終わった後も続きがあり、場所を移動してたった今見終わった「はだしのゲン」について感想などを話し合いました。

同じお芝居を見ても人によって感じたことは違いますし、気づいたことも違うはずです。そういうことについて共有することで、より鑑賞を深めることがねらいです。この会は、かなり盛り上がるようですが、今回は舞台芸術鑑賞講座という講座の一環だったこともあり、鑑賞したものについての感想というより、ガイドや解説についての受講生の反省会のようになってしまったことがもったいなかったなと思いました。

■まとめ

私は、戦争を題材としたお芝居が苦手です。なので、今回音声解説を作るために事前に録画したものを見せていただき、物語の背景や演劇の舞台についても調べたのですが、とても重たい気持ちでした。

特に、被爆した人々が町をさ迷うよう様子が工夫されていて印象的であった反面、「あ~つ~い~」という人々の不気味な叫びが耳に残り…。

しかし、実際に舞台を見ることができて良かったと思いました。
そして、このお芝居をより楽しむために音声解説が担っていた役割は大きかったです。

自分が今後音声解説にどのようにかかわっていけるか分かりませんが、今回の講座での体験は私に新しい気づきを与えてくれました。

私が、音声解説デビューする日は来るのか!?


「生誕100年 朝倉摂展」スライドトーク 企画秘話と芸術家の足跡

朝倉摂展のスライドトークに参加してきました!




今年3度目となる「生誕100年 朝倉摂展」への訪問。今回は、担当学芸員によるスライドトークに参加しました。

美術館で、学芸員による展示の解説があることは知っていたのですが、実際に参加するのは今回が初めてです。

偶然見つけてオンラインで申し込み、無事当選。いざ、練馬区立美術館へ!


今回、実際に2つの美術館の同じ企画展を見に行って、同じ企画でもどの美術館で行うのかや学芸員によって、際立たせるところに違いがあって面白いなと感じたのですが、スライドトークでは、今回の朝倉摂展の企画の秘話が聞けて、より視点が広がりました。

コンサートや公演もそうですが、出来上がったものはさることながら、そこまでのプロセスはもっと興味深かったりします。

プロセスを知るとそこまでのドラマも共有したような気持ちになるからでしょうか、単なるお客さんの視点からもっと広がるように思うのですが、みなさんはどうですか?

 

■興味深かったのは、朝倉摂についてのエピソード。

朝倉姉妹は、父親の教育方針で、学校には通わず家庭教師から教師を受けていたのですが、学力がともなっているか、学校と同じように試験もあり、試験前になるとカンニングペーパーを仕込もうとしていたとか。

日本を代表する彫刻家、佐藤忠良とはとても仲がよく、朝倉摂の方からよく電話をかけていたとか。

労働や貧困などの社会問題を題材とした作品をあるときからやめて、舞台芸術のほうに方向を変えていくのですが、その理由のひとつとして、貧困を題材に扱っていても、結局は著名な父親を持つ裕福な家庭で育った摂に対する冷たい評価があったことも影響しているのではないかというお話も興味深かったです。

 



私には著名な芸術家は特別な人で、自分とは全く違う人だという思いがあります。確かにかなり特殊な環境で育っているなと思う人は多くいます。ですが、自分と通ずるものもあって、素晴らしい作品をただありがたがって鑑賞するだけではない、作者の人間味も感じられる企画の面白さを感じました。

■私がコンサートの案内係の裏側について発信しているのも、裏側を知ることで舞台上だけではない劇場のうまみを味わうことができるのではないかと思うから。

実は、公演中の舞台の上以外にも知ると面白いうまみがあるのだ。

こういう企画をほかにも探して参加してみたい。


■「生誕100年 朝倉摂展 担当学芸員によるスライドトーク

■日時:2022年8月12日(金) A・B各回20分程度

■講師:真子みほ(練馬区立美術館 学芸員

■会場:練馬区立美術館1階視聴覚室

■参加費:無料 ※要 鑑賞券(当日以外の半券可)

■座席:全席自由席

 

 

視覚障がい者のサポート「音声ガイドを作成しよう」⑤

■視覚障がい者のサポート講座(全6回)

 内容:①視覚障がい者の話を聞く
    ②音声ガイドの実例紹介・機材の説明
    ③事前解説をつくる 
    ④本編ガイドを考える
    ⑤誘導の練習 
    ⑥劇場実習 @俳優座劇場(Pカンパニー「はだしのゲン」を視覚障がい者と一緒に音声ガイド付きで鑑賞する)


⑤誘導の練習 

今回は、二人一組になって、誘導の仕方を練習します。
まずは、室内で、その後、外に出て最寄り駅と青年座間の誘導をします。

私は、外での誘導はあまりしたことがなく、不安がありました。外は、夕暮れ時で暗く、駅は、多くの人が行ったり来たりしています。さらに、駅には長い階段もあり、道は、室内と違って凸凹。

まずは、私が誘導される役で次に交代します。

誘導されるときに思ったのは、障害物のない道をまっすぐ歩いているときでも、「何もないのでそのまま進んでください」とか「右手には、○○があります」など道にあるものを実況してくれたり、何か声をかけられていると安心する感じがしました。

階段はどこまで続いているのか分からず、探り探りになる私。

自分が誘導するときは、ほんのちょっと左や右に向いてほしい時やずれてほしい時の言葉がけが難しかったのと、階段の途中にあったちょっとした溝をうまく説明できず、怖い思いをさせてしまいました。ほかにもいろいろ反省点はあり…。

コンサートホールでも、視覚障がいのある方を案内することはあるのですが、野外ほど複雑な障害物がないのと、いつもいる場所なので、慣れているということもあり、今回はいつもとは違うシチュエーションにドキドキしました。

しかし、ホールにいらっしゃるお客様は言わないだけで、実際には怖い思いをさせていたのかもしれないと反省。

実際にやってみることで、こういう場合はどうしたらよいのか?とさらに考えるきっかけになり、手に汗握りながらの学習になりました。